【連載】化粧特許と知的財産権⑮ナノエッグ、ナノ粒子の特許取得、整肌成分を開発し原料販売(上)

2019.07.31

特集

編集部

医療・化粧品開発ベンチャーの株式会社ナノエッグ(東京都港区)は、2003年9月に独立行政法人「科学技術振興機構」(JST)の研究開発に関わるプレベンチャー事業「レチノインサンナノ粒子による皮膚再生事業」が採択され、事業化をスタート。2006年4月に事業会社「ナノエッグ」を設立した。
2003年10月には、発明の名称「多価金属無機塩被覆レチノイン酸ナノ粒子の製造方法および同製造方法により得られたナノ粒子」として特許出願。2006年10月に聖マリアンナ医科大学と共同研究契約を結び同大学発ベンチャーに認定される。2009年12月には、特許を取得、この特許を弾みに知的財産戦略を一層加速させ、化粧品事業に拍車をかけた。

同社が特許として権利化した「多価金属無機塩被覆レチノイン酸ナノ粒子の製造方法および同製造方法により得られたナノ粒子」は、世界で初めて炭酸塩という「無機質薄膜コート」を開発。薬物包摂濃度が99%以上で生体適合性に優れ且つ、カプセル表面の皮膚親和性を高め、皮膚角質内に薬剤をすばやく浸透させるなど生産上のメリットが高い。
一般に、粒子径が数10nm(1nm:10億分の1m)ほどの球状製剤をナノカプセルという。薬物を含む層を合成高分子や天然高分子の皮膜で覆い、局所での薬物の持続的放出や組織標的化を狙う「薬物搬送システム」(DDS)技術のこと。

同社は、薬剤で球状ミセル(球状分子集合体)を作り、その周囲を無機質と両親媒性のPOE(ポリオキシエチレン)でコートしたナノカプセル技術「ナノエッグ」を開発した。
ナノエッグは、コートしたPOEが角質の細胞間脂質と馴染みやすく無機質コートによりカプセルが安定化されているため、皮膚にこすり込んでもカプセルが壊れることなく角質内に浸透し、角質内部に入ったカプセルは、自ら角層深部まで拡散する。
このような特許技術に加えて、脂質の「ラメラ構造」に着目。これまでにない画期的な視点で発見した物理現象により、皮膚への浸透力や有用性を持つさまざまな素材を研究開発した。
その中から配合成分の経皮吸収を促進(角層まで)するジェル状整肌成分として開発したのが整肌成分のナノキューブ。

ナノキューブは、肌が生まれ変わるサイクルをコントロールする「スキンホメオスタシス機能」に働きかけるジェル状整肌成分。
最新の皮膚科学研究から、細胞間脂質という皮膚が持っている構造に着目し、一時的に構造を揺るがすことにより、肌にスイッチを入れる。
これにより、肌の奥(角質層)まで浸透し、ヒアルロン酸やコラーゲンを自ら産生することで内側から素肌を整える。2006年11月にナノキューブを化粧品メーカー等へ化粧原料として販売を始めた。
同社は、肌に効く成分を化粧品として販売する事業をまず立ち上げた。医薬品事業を立ち上げるには、臨床試験など期間と高額の費用がかかる問題があった。このため、まず化粧品事業として化粧品を直接製造し自ら販売する事業とその原料を化粧品会社などに販売する事業を推進した。

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