〇解説記事①「キリンの傘下に入ったファンケル」 ~キリン、ファンケルの株式買い増しと子会社化に打って出るか~(下)

2019.08.28

特集

編集部

ファンケルの池森会長は、なぜキリンを株式譲渡先として選んだのか。その理由は、2つ。両社にとって互いに競合する事業がなく逆に大きなシナジー効果が期待できると判断した。

発酵技術にたけたキリンと化粧品やサプリメントの開発やマーケティングの知見が深いファンケルが互いの強みを持ち寄れば、新規性のある商品を生み出しやすいこと。さらに、原料や資材の共同調達、インフラの相互利用で、経営効率を高めることもできる。

決め手となったのはもう1つある。池森氏は「複数社に声を掛けて買値を競わせるような売り方をせず」あえてキリン1社に絞って話し合いを続けてきた。
そうした話し合いの中から池森氏は「キリンならかけがえのない社員を大切にし、ファンケルの独立性を維持しくれると判断した」という。特に、ファンケルにとってサプリメントや化粧品の市場で、高い機能性やエビデンスを持つ商品開発は、待ったなしの状態。
さらに、中国など海外展開は、急務の状態で資金需要は引き続き旺盛だ。資金調達先としてキリンをパートナーとしてふさわしい存在と確信したことも不思議ではない。

今度の資本業務提携で両社は、キリンからファンケルに常勤取締役と非常勤取締役、常勤監査役等3名を送り込むことでも合意している。

キリンからファンケルに役員派遣の合意を踏まえて両社は、化粧品やサプリメントの共同開発、生産面での協業、販売チャネルの相互乗り入れなどを本格検討することになる。特に、キリンは、サプリメント開発について今後、3年間で3000億円を投じることを公表するなど力を入れる。

キリンの2019年12月期は、豪州事業の減損損失計上などで減益を見込む。しかし、キリン の業績にはファンケルの当期純利益(2020 年3 月期計画102 億円)の約3 割が持分法投資利益として寄与するため財務バランスが大きく崩れることはない。

今回の資本業務提携では、キリンがファンケル株を取得するのは、ファンケルの発行済み株式の3分の1未満であるため、株主総会の特別決議における単独拒否権は生じない。

それだけにファンケルは、一定程度の独立・独自性を保てる。だが、キリンにとって今後、ファンケルの株式50%超を取得し、子会社化したほうが事業を展開するうえでやりやすいのは自明の理。加えてキリンから役員を送り込めば計数管理などファンケルの経営を手に取るように掌握できる。今後、ファンケルへの役員派遣の時期やキリンによるファンケルの株式買い増しや子会社化に打って出るか、その行方か注目される。

 

 

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