「和ハーブ」をエステサロンの新メニューに
2015.07.23
編集部
空前の健康ブームが広がりを見せる中、同じ健康に良いものでも、ついつい科学的根拠のある成分を配合したサプリメントや健康食品などに目を向けてしまう人は多いのではないだろうか。実は、われわれの身の回りには、意外と気づいていない多くの健康的な植物であふれている。「和ハーブ」はその代表だ。
「和ハーブ」とは、広義では江戸時代以前より日本に広く自生している有用植物のことで、狭義では香りや薬効が高い葉や茎の部分を指す。和ハーブ協会(東京都港区)が提唱しているもので、同協会では、滋賀県と岐阜県にまたがる伊吹山(写真右)と沖縄で採取できる有用植物を中心に、全国各地でも独自の文化・伝統に結びついた植物の有用性について、啓蒙・普及活動を行なっている。
中でも、「和ハーブ」の聖地として知られる伊吹山では、280種以上の野生の薬草であふれており、地元の人たちはこの薬草で生計を立ててきた歴史がある。一部のエリアでは、薬剤師より生薬に詳しい「名人」と呼ばれる村人が住んでおり、日ごろから自身の体調に合わせて、「和ハーブ」を使ったお風呂、お茶、ご飯などを作って暮らしている。
彼らは、どの「和ハーブ」にどういう効能があるか熟知しており、祖先から代々引き継いできた。しかし、近年、それを引き継ぐ人材が不足しており、同協会がてこ入れを行なっている。その具体例の1つが「和ハーブ塾」と銘打ったツアー企画。参加者たちは、「和ハーブ」を育てている村人から「和ハーブ」の知識を学びつつ、山の中を散策し、「和ハーブ」を使った食事、ワイン、染物などを体験できる。
「20人限定のツアーだが、3カ月前から募集を開始しても3日~1週間で満杯になり、キャンセル待ちが出るほど。参加者の年齢層は幅広く、若者も伊吹山の風景に心くすぐられて応募してくる。中にはエステティシャンもいる」(理事 古谷暢基氏)。
同塾は、伊吹山のほか、沖縄、鎌倉、北海道、高知などでも実施している。北海道や高知には同協会の地方組織もあり、「各地の独特の文化を吸い上げて、地域興しにつなげている。(高齢者の多い地方では)介護予防にもつなげていきたい」(古谷氏)考えだ。
多くの人の心をくすぐる「和ハーブ」には、具体的にどんなものがあるのか。香りの良さにフォーカスしたものとしては、まずタチバナ(写真左)が挙げられる。タチバナは、昔の恋人への慕情を綴った「古今和歌集」の中にも出現するように、衛生状態の悪かった当時、香りのブレスレッド代わりに用いられた。また、アイヌ民族ではヨモギをボディデオドラントとして用いていた歴史があり、「西洋アロマをやっている人は、(自分の身近に香りの和ハーブがあったことに)衝撃を受ける」(古谷氏)という。
天皇家が一般庶民に開放したとされる日本初のお風呂「からふろ」では、セキショウが用いられた。仏教が政治と密接に結びついていた時代、仏教の教えをスピーディーに民衆に伝える道具として用いられた紙は、アサが最初の和紙の原料となった。ただ、アサは加工に手間がかかるため、その後にコウゾにとって代わった。
このほか、お酒(ワイン)としてヤマブドウ、日本茶の元祖としてヤマチャ、口紅としてベニバラ、海産食物としてアシタバ、薬としてドクダミ(写真右)やゲンノショウコなどがあるほか、普通にお店で買うことのできるものとしてはミツバ、セリ、シソ、ショウガ、ユズなど枚挙にいとまはない。
「和ハーブ」は、エステ業界でも新しいメニューの1つとして導入が期待できる。「例えばサロンの室内を和式にしつらえて、和ハーブオイルを使ったマッサージや、和ハーブ足浴などを提供できる」(古谷氏)。
化粧品についても、和ハーブを配合した美容液シリーズとして提案できるという。同協会では、薬学・医学博士など専門家が顧問として名を連ねており、和ハーブに備わっている科学的な効能についてもお墨付きを得ている。
「和ハーブ」について、より詳しく知りたい人は、平川美鶴/石上七鞘著「8つの和ハーブ物語~忘れられた日本の宝物」(産学社)に詳しく掲載されている。「和ハーブ」は今後、様々な可能性を秘めたキーアイテムとなりそうだ。
- 参考リンク
- 和ハーブ協会