【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証㉘サブプライムローンで金融恐慌、日本、ベンチャー投資・IP0激減

2017.05.18

特集

編集部

米国で起きたサブプライムローン(*注釈)による国際金融危機の影響で2007年から2010年までの4年間は、国内ベンチャーへの投資が凍り付くとともに、株式公開も極端に減少した。
サブプライムローンは、米国の住宅バブル崩壊による金融危機のこと。サブプライムローン債権を購入した米国、欧州、日本の銀行を中心に住宅バブル崩壊で、ローンが焦げ付き国内ベンチャーへの投資が極端に悪化したもの。中でも名門銀行「リ―マン・ブラザーズ」は、負の連鎖で負債が膨れ上がり経営破綻に陥った。

ベック(VEC)調査によると、サブプライム崩壊による金融危機が日本へ及ぼした影響として、2008年に国内で新規上場(IPO)した企業数は49社。前年比6割方減少した。その結果、2008年に新規公開企業が市場から調達した金額は、168億円と前年比で7割以上減少。1社当たりの平均調達額も36%減少した。
こうした金融危機が国内ベンチャー企業の成長戦略の大きなゴールであったIPO 環境に強く影響を与えた。
ベンチャーキャピタルにおいてもリスクマネーの供給が先細りした。ベンチャーが株式公開に際して、投資回収の見込みが立ちにくいことからベンチャーキャピタルの新規投資額、投資社数ともに約50%減少したほど。
ベンチャー企業からみるとVCからの投資は減少、銀行融資も縮小するなど、資金供給の先細りが色濃く反映した状況にあった。

我が国のVCは、投資回収手段(出口)として投資先ベンチャー企業のIPOに依存する割合が極めて高く、米国VCが収益の中心に置いている他企業への売却やM&Aなどの手法は、大きなウエイトを占めていない。
「100年に1度」と形容される金融危機は、我が国ベンチャーへの資金供給の減少やVCのこれまでのビジネスモデル自体の再構築を迫る形となった。

2010年になって日本はリーマンショックから立ち直り、ベンチャーへの投資も政府系ファンドの中小機構に負うところが大きくなった。

*注釈

サブプライムローン
サブプライムローンとは、米国の住宅ローンの形態の一つで、信用力の低い個人や低所得者層を対象にした住宅ローンを指す。最初の借入金利は、低めに設定し、数年後から高金利になる仕組み。住宅価格の上昇で住宅の担保価値が上がれば、より低金利のローンに借り換えることができる。しかし、住宅バブルの崩壊による住宅価格の下落と金利負担の上昇により、ローンの延滞や返済不能が急増し、多くの個人が破産して自分の家を失うことになった。
米国の住宅ローン(モーゲージ)は、通常の信用度を持つ個人向けの「プライムローン」と、それよりも信用度の低い個人向けの「オルトA」、さらに信用度の低い個人向けの「サブプライムローン」の3つがある。この中でサブプライムローンのリスクが一番高く金利も一番高く設定された。
特に、問題となったのが複数のサブプライムローン等を担保にした住宅ローン担保証券(RMBS)を作り、さらにRMBSを裏付けにした債務担保証券(CDO)を作るなど、株式・債券・金利・外国為替などの金融商品(原資産)から派生して生まれた金融派生商品「デリバティブ」を駆使して組成したハイリスク・ハイリターンの複雑な証券化商品として世界中の銀行、保険、証券会社に販売した。
米国発のサブプライムローン問題は、2009年の「リーマンショック」に象徴される世界金融危機(世界的な信用不安)を引き起こし、世界各国の株価暴落、為替相場の乱高下、金融機関やヘッジファンドなどの破綻、世界同時不況が起きた。
金融機関の破綻は、金融工学の手法で商品化を図った住宅債券をマネーゲームのように、格付けローンと組み合わせて虚構を張りながら販売したことが傷跡を大きくした。

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