東京栄養士薬膳研の特別講演「生活習慣の改善で健康づくりを」
2018.05.28
編集部
東京栄養士薬膳研究会(代表・海老原英子氏)の平成30年度通常総会が27日、都内で開催され、特別講演の講師に招かれた漢方相談アドバイザーの于爾康氏が「日々の生活から健康作りへのアプローチ~漢方相談に来る方の疾病の原因と臨床の実際~」をテーマに講演した。于氏は生活習慣の改善の重要性に触れ、「病は自分で治るものだ」と強調した。
現代の病気は、地球温暖化などの自然環境、ストレスなどの社会環境、昼夜逆転などを含めた個人生活が複雑に絡み合い、「生活様式の変化による生活習慣病」「OA機器による職業関連病」「社会的緊張によるストレス関連病」「アレルギー性疾病」などを発症。「1種類ではなく、多種類の因子が重なって病に至る」(于氏)のが特徴だ。
こうしたことから、予防重視の健康対策が注目されており、“cureからcareへ”というのが今後の方向性で、QoLの向上が求められている。また、中医学の視点から見ると「人間は環境の中の一部なので、1人では病は治らない」(于氏)との考え方から、トータルで健康問題に対処していくことが重要となると指摘。さらに、気持ちに不安があれば肉体も苦痛を感じることから、精神面でのケアなども大切だとした。
しかしながら、病院においては、検査値による診断がなされ、病名に頼った局所的な対症療法が目立つ。例えば「胃は気持ちと関係があるのに、胃薬だけ処方して済ましてしまう。症状の裏の原因は無視されている」(于氏)と現代の診断方法に疑問を投げかけた。さらに、例えばガン治療については、ガンだけを鎮圧、抑制するような一方通行の解決姿勢が目立つことに対して、「ガンの土壌を見ない。根本の土壌の改善がなければ再発してしまう」(同氏)と警鐘を鳴らした。
漢方相談では、独自の診断法である「望診、問診、聞診、切診」などを駆使して病気の原因、発病の増悪因子などをきちんと把握。症状の軽減や根絶に向けた飲食法、精神調節、起居や運動など日常生活の注意点を助言する。「ほとんどの病気は生活習慣と何らか関係かある。それを毎日改善していくことで体の抵抗力がついていく」(于氏)との考えを示した。
薬膳の面から健康作りを実施する上では、季節と一日の陰陽変化に能動的に順応し、朝は温性の食物を摂りウォーミングアップ気分で、夕食はクールダウン気分で食べる。朝は発散性(辛味など)、夜は収斂性(酸味)の食物を選択することを勧めた。例えば「夜に(温性の)生姜は避ける」(于氏)ことを例に挙げた。
食物は、単なる栄養素としてだけ考えるのではなく、「生き物として考えることが大切。食べたものが体の中で栄養になるか否かは食べ方次第だ」(于氏)と訴えた。
- 参考リンク
- 東京栄養士薬膳研究会