化粧品用新素材「セルロースナノファイバー」(CNF)が脚光

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2018.04.20

編集部

新素材「セルロースナノファイバー」(CNF)が化粧用の原料として脚光を浴びている。

CNFは、植物のパルプから抽出されるもので、太さ10億分の3ミリほどの「セルロースミクロフィブリル」という繊維の抽出物を10憶分の1のナノレベルまで微細化し、ゲル状の液体(写真)やシート状に加工した材料をいう。

特徴は、鉄鋼の5分の1の軽さで、強度が同5倍以上あり、熱による変形が小さい(ガラスの50分の1)という優れた特性を持つ。
特に、CNFを水に溶かすと2つの特徴が現れる。
1つは、粘り気(粘性)で、もう1つが分散(安定性)である。CNFは、濃度が1%以下の時に何もせずに静止した状態では固形のジェル状だが、それを振ったり圧力を加えたりすると瞬時にサラサラの状態になる。

この水分散物は、温度が一定のもとでゲルに攪拌、振りまぜ等の応力を加えると粘度が減少してゾル化し、攪拌等をやめるともとのゲルに戻る現象「チキソトロピック特性」をもつ。
このため、保水性、増粘性、粒子分散安定性に優れ、ベトつかず水を纏うようなみずみずしい感触をもつことから、化粧品への幅広い応用が期待されているもの。

こうした中、日本製紙株式会社(東京都千代田区)は、2017年9月に島根県の江津工場において化粧品等向けCNF量産設備を稼働し、供給を開始。

製紙大手の王子ホールディングス株式会社(HD、東京都中央区)と化粧品原料商社の日光ケミカルズ株式会社(東京都中央区)は、CNFの化粧品原料としての新しい用途・機能の開発を共同で行うことで合意。現在、新製品開発に取り組んでいる。

王子HDは、CNFを効率よく生産できる独自のプロセスを開発し用途開発を進めてきた。また、日光ケミカルズは、環境への配慮と同時に経済性を両立させた持続可能な発展を戦略として、高品質で高機能な化粧品原料を開発・製造してきた。
両社は、長年、それぞれの事業領域で培ってきた技術や知見やものづくりに対する取り組みを融合させたCNF活用の新製品を開発し事業の成長に繋げることにした。

経済産業省は、CNF関連市場について2030年には1兆円の市場を形成すると公表したことで、約300社程度がCNF市場に参入している。しかし、現在のCNFFの課題は、価格が高いこと。1㎏当たり5千円~1万円と鋼鉄の50円から200円に比べて高すぎる。

量産効果で一気に下がる可能性があり、2020年ごろには1000円程度にまで下がるとの予測がある。

今後、CNFの化粧品への応用や新素材を活用したサンオイル、ファンデーションなどの新商品開発について、化粧品メーカーや大学との産学共同研究の動きが一段と活発化するのは必至とみられる。

参考リンク
日本製紙株式会社
王子ホールディングス株式会社
日光ケミカルズ株式会社

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