〇解説記事④人工皮膚化粧品の研究開発に力 ~人工皮膚の未来、美容と医療のすそ野広げる~(Ⅴ)

2019.09.27

特集

編集部

肌は人間の臓器などを外部の刺激から守る重要な器官。肌が荒れるのは、体からのサインともいわれ、美しい肌は健康の証でもある。美しい肌と健康な肌の追求は、目的が同じであり「美容」と「治療」の境界がなくなるのは必然的な流れといえよう。
資生堂と花王にみられるように製品化前の人工皮膚の基本技術を公表することで、化粧品と治療領域双方の新たなビジネス創出に期待を示した。

花王は、繊維1本の直径が0.5ミクロン、120kmの長さの極細繊維をスプレーのように吹き付けながら紡ぎあげ、皮膚のように繊維を貼り付けるために小型デバイスを開発。極細繊維をベースに柔らかい吸着に優れた皮膚のような繊維を誕生させた。それを人工皮膚「ファインファイバー」と名付け研究成果を公表した。
この極薄膜は、折り重なった繊維と繊維の間に化粧品製剤をしっかりと保持し合わせて液状の製剤を膜全体に速やかに均一に広げる。一方で、繊維の隙間から適宜水蒸気を通すので、肌を完全に閉塞することなく適度な透湿性も保てる。
このような皮膚のような繊維は、スキンケアをはじめ医療などさまざまな分野への応用が期待できる。当面、ファンデーションなどのメーキャップ製品での投入を考えるが、治療現場での活用も視野に入れる。

現在、一般論として人工皮膚の活用は、医療分野で進んでいる。カニ殻やエビ殻に含まれるキチンやキチンをアルカリ処理して得られるキトサンンは現在、手術用の縫合糸や皮膚欠損用創傷被覆材などの人工皮膚が用いられている。また、シート状にしたキチンを患部に貼り今後、人工皮膚は、美容から治療へ、治療から美容へと肌研究の境界線をなくしながら応用分野のすそ野を広げていく見通し。皮膚が再生するまでの保護膜としてつかわれている。さらに再生医療分野でも人工皮膚が使われている。

再生医療で使われる人工皮膚は、生体成分であるコラーゲンやヒアルロン酸などで人工皮膚の骨組みをつくり、そこに培養した皮膚細胞を加え、それを成長させたもの。これを患部に貼ることにより、皮膚を再生する仕組み。

 

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