〇解説記事①キリンの傘下に入ったファンケル ~キリンがファンケルの株式1293億円で取得~(上)

2019.08.26

特集

編集部

株式会社ファンケル(神奈川県横浜市)とキリンホールディングス株式会社(東京都中野区)の両社は、2019年8月に資本業務提携を結ぶことで合意(写真)。同年9月にキリンホールディングスがファンケル創業者で現代表取締役会長執行役員ファウンダーの池森賢ニ氏ら個人が保有する株式33.0%(議決権ベース)を1293億円で取得する。これによりファンケルは、キリンホールディングスの持ち分法適用会社としてグループ入りすることになり軍門に下った。

キリンホールディングスによるファンケルの株式取得は、池森賢二氏他5 名(個人)および池森氏らの資産管理会社との間でそれぞれ個別に、ファンケルの発行済株式を市場外の相対取引を通じて譲り受ける。譲渡は、2019 年 9 月6 日付で実行する予定。
一方、業務提携については両社のブランド、技術を生かした新発想の商品、ブランドを開発。生活習慣病、脳機能、フレイル、リハビリ対策などの共同研究を進める。また、酵母・発酵技術を生かした化粧品の共同開発、生産面での協業、キリンの自販機チャネル、ファンケルの直販チャネルの相互~乗り入れなどに取り組む。今後、協議を重ねながら順次、決定していく方針。

ところで両社が資本業務提携に踏み切った理由や目的は、キリンホールディングスにとって今年2月に「世界の CSV先進企業」となる」ことを目指して長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(KV2027」)を発表した。
CSVとは、Creating Shared Valueの略。企業が社会と共有できる価値を創造すること。社会課題への取り組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値の向上を実現することを目標として掲げたもの。
同社は、CSV 経営を進めるにあたり策定した長期非財務目標「キリングループ CSV パーパス」では、グループを取り巻く社会課題のうち「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に「健康」、「地域社会・コミュニティ」、「環境」の3 つを CSV 重点課題として選定し、これらの解決に取り組んでいく。
とりわけ「健康」の取り組みの歴史は長く1981 年に定めた長期経営ビジョンに基づきライフサイエンス分野に進出してからは、酒類・飲料による「食領域」と医薬事業による「医領域」の双方から「健康」に関する社会課題を解決してきた。

KV2027 においては、これまでキリングループが培ってきた組織能力や資産を生かし「食領域」と「医領域」の中間領域にあたる「医と食をつなぐ事業」を立ち上げ、次世代の成長の柱として育成していく方針を打ち出した。今年4 月には、従来「医領域」にあった協和発酵バイオ㈱を「医と食をつなぐ領域」の中核事業会社に位置づける再編を完了し、グループの資産である高機能アミノ酸、免疫、脳や腸内環境に関する機能性素材などを強みとして最大限に活用する計画。

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