化粧品・原料各社が生産増強に走る
2015.07.7
編集部
円安による海外観光客の“爆買〟や、5年後の「2020年東京オリンピック開催」による特需を狙いに化粧品(OEM含む)各社が高機能化、高価格化の化粧品を中心に増産に乗り出す。これまで化粧品業界は、デフレ経済に伴い需給もタイトに推移するなど市場も閉塞感が漂っていた。しかし、ここへきて外的要因を背景に需要回復の足音が見え始めており「繊細一隅のチャンス到来」として市場は、明るいムードに覆われている。
コーセーは、群馬県伊勢崎市のコスメタリ―を生産する群馬工場敷地内に総投資額60億円を投じて「コスメデコルテ」など中高級価格帯のメーキャップ化粧品やスキンケア化粧品を中心に生産する新工場を建設する。完成は、2017年上期を予定。
新工場は、地上3階建て、床面積1万8600平方㍍。年間4500㌧、3000万個の生産能力を持つ。完成すれば同社全体の生産能力は約3割増える見込み。
同社が化粧品の新工場建設に踏み切ったのは「海外からの観光客数が2000万人を突破し5年後の東京オリンピックの特需を織り込んで、需要増加に対応し、生産態勢を強化する」狙いによる。
アース製薬は、中国などからのオーラルケア製品の需要増加に対応するため、赤穂工場(兵庫県赤穂市)に洗口液「モンダミン」の生産棟を新設し、生産能力を現在の2倍に引き上げる。投資額は、45億円を見込む。年内にも工事に着工し、2016年秋完成を予定。
ダイセルは、化粧品原料事業を拡充する。化粧品メーカーなどに対して油相比率が高い安定的なオイルインウォーターエマルジョンを調製できるゲル化剤やオイルの付与剤といった新規素材の提案に力を注ぐ。また、ユニチカから譲り受けたセラミドの化粧品分野への応用展開にも乗り出す。
こうした化粧品、化粧原料の生産増強策は、中国、タイなどの海外観光客の爆買の中心になっている高機能化、高価格帯の化粧品需要が旺盛なこと。この海外観光客という外的な要因による好調な需要見通しは「東京オリンピックまで続く公算が強い」との見方で一致。化粧品業界にとっては「正に千歳一隅のチャンスが到来した」と明るいムードに覆われている。