〇解説記事②人工知能(AI)、美容業界に変貌迫る ~美容家電パナソニックがミラーで肌解析~(下)

2019.09.4

特集

編集部

美容家電やAIロボットに注力する株式会社パナソニック(大阪府門真市)は、鏡の前に立つだけで、心拍数、血圧、体重の増減、肌の状態などの健康状態がわかるAiロボット家電「スノービューティーミラー」(写真)を開発し化粧・美容業界各社に売り込みを始めている。
同社のスノービューティーミラー関連のプロジェクトが発足したのは2013年。当時、テレビやモバイルなど既存の産業が縮小していくなかで、将来的にあるべき家電のカタチとは何か、新たなビジネスをどう展開していくべきか、議論する中から商品化にこぎつけた。商品開発コンセプトは「
あなた専用の美(体内・体外:見た目・心の三位一体)への窓口を提供します」―。
同ミラーは、センサーやカメラを内蔵し、顧客がミラーの前に座るとカメラで顔を撮影し合わせてセンサーが肌表面のキメやしみ・シワに加えて肌内部の状態も読み取る。この肌解析データを基に化粧の仕方をAR(拡張現実)で表示しアドバイスする。また、顧客自身で美容のPDCA(Plan=計画・Do=実行・Check=点検・Act=改善・処置の頭文字)サイクルを回すことができる。
こうした双方向性(インタラクティブ)は、PDCAサイクルを継続するうえでのドライバーになる。さらに、同ミラーは、肌の状態を分析するだけでなく多数の眉の形や眉墨の色を簡単に試すことができるなどメイクアップの提案、シミュレーション機能も備えている。

同社の画期的な点は、肌解析とそれによるアドバイスだけでなくそのデータを生かした新たなソリューションの提供も視野に入れている。
同社は、ミラーの肌解析で得た情報を基に肌の悩みを解決する「メイクアップシート」も開発した。メイクアップシートは、手術などで実際に使われる人工皮膚と同等の素材を用いたもので、肌の悩みを隠すために肌に直接貼り付ける。
このシートは同社のプリンティング技術を生かしたもので今後、美容成分を配合したスキンケアとメーキャップの二層構造を実現する方針。

すでに同社は、美容家電を専門に展示販売する「パナソニックビューティサロン銀座」に、顔認識技術を使ってシワや毛穴、潜在シミなどの肌分析を行い、結果を表示する「スノービューティーミラー」を設置し販促展開。また、同ミラーの営業活動2019年春から試験販売を始めている。「美」に関するビジネスの裾野が広いことからBtoB分野での提供を先行させ、化粧品メーカーなどに売り込みを図っている。

同社では「化粧品各社が店舗への集客問題に直面している。同ミラーを集客や顧客満足度を高めるための1つの手段になる。同時に、顧客の肌の状態を分析することに加えて、肌状態に適した化粧品をセレクトするための材料として活用してもらえる」として提携企業に合わせた機能カスタムの受注増加に期待を込める。

同社は今後、人工知能やIoTの技術をAIロボット家電や店舗・接客ソリューションなどの領域に活用できると想定し活用促進を図る。将来的には、ネットワーク越しに人工知能とやり取りできるようにするなど適用範囲を拡大する計画。

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