- 副業解禁×ポータブルスキルで広がる美容プロの新キャリア
- 待ち時間でスキルUP!美容師必見のオンラインサロン活用法
- “教育輸出”がビジネス軸に!日本式美容教育のグローバル戦略
- 欧米流教育モデル導入で差をつける!ICAM×ミシュラン式ノウハウ
- ビジネスの発展を考えるならば 教育の見直しは不可欠
- 技術の“型化”で教育→商品化!見える化が生む新収益
- 自己実現サロンの作り方!マーケ4.0×基礎技術力の両立
- “ご贔屓様”が宣伝部長!リファーラル率最大化の極意
- 口コミを戦略化する経営手法!自然発生的な紹介を促す仕組み
- 顧客の“メガネ”をかける提案術!価値観に寄り添うヒアリング法
- 背景分析×課題解決で刺さる提案!データドリブンな営業トーク
- “ゲーム感覚”で楽しむエステ!遊び要素が生むリピート効果
- 売り方刷新で需要拡大!エステ体験の再定義マーケティング
副業解禁×ポータブルスキルで広がる美容プロの新キャリア
エステティシャンは就職後の定着率が低く、他の業界に転職してしまうケースが多々あります。専門性を高めた後のキャリアの可能性を提示しなければならないのではないでしょうか。「働き方改革」がしきりに叫ばれていますが、長時間労働の原因となっていた練習時間などをどのように捉え直すのか、業界全体の課題も多そうです。美容師やエステティシャンを例にとると、専門職ですから当然ながら練習をしなければならない。でも「練習してほしい」と言うとスタッフはプレッシャーを感じて辞めてしまうし、法的にも問題がありそうだし、と経営者も尻込みしてしまう状況です。これは教育力が不足しているからではないでしょうか。短期間で技術を高めるノウハウは必ずありますし、しっかり技術を身につけてもらい、一人前としてデビューするまでの時間を短くしてあげればいいのではないでしょうか。早く現場に立ってもらい、戦力として生産性を高めてもらえればいいはずです。この連載でもお話してきたように、ナレッジ化やTTP(徹底的にパクる)などをもっと進めてほしいと思っています。
正社員についても副業が可能になる会社も多いようですが、美容業界についても課題は多いものの、本業とよい形でリンケージできれば、個人にとっても企業にとっても、社会にとってもプラスになると感じています。長く働くために、会社のあり方や個人の生き方はどんどん変化していくはずですが、副業に関してはこの時流に合っているといえるのではないでしょうか。
待ち時間でスキルUP!美容師必見のオンラインサロン活用法
オンラインサロンとは、ウェブ上で開かれるオンラインのスクールビジネスのことです。クリエイターや実業家、コンサルタントなど特定の知識やスキルを持っている人などが主宰者となり、サロンを運営しています。会員は月額で会費を納め、コミュニティに参加します。主宰者が発信する情報を定期的に受け取れ、主宰者とコミュニケーションが取れるのが参加者のメリットですね。
美容師やエステティシャンは、自主的に勉強しようとすると、どうしてもサロン閉店時間後などになりがち。労働時間が増えてしまい、体力的にももちません。そのため、お客さまを待っている昼間の時間帯などを活用して、オンラインサロンで勉強することができます。
大手の企業やサロンに勤めている人は、整った教育システムのなかで学べるのですが、フリーランスや中小のサロンに勤めている人は自主的に情報を集めて自身のスキルを磨いていかなければなりません。オンラインサロンを使えば、労働時間を極端に増やすことなく、知識を積み重ねていくことができるのです。
“教育輸出”がビジネス軸に!日本式美容教育のグローバル戦略
店舗独自の教育システムを外部に向けて発信することで、新たな売上げを立てようという試みが広まっています。背景には、海外、特にアジアの美容業界の拡大があります。人の身体に関わる安全、健康、クオリティに対して、アジア人の意識が急激に高まっています。それに対して、教育は足りていません。日本のサロンの衛生管理はたいへんに優れています。さらに、オペレーションやサロン独自の土壌もありますから、これらを教えるだけでも売上げの大きな柱となるはずです。
日本の美容サロンにける、現場スタッフの向上心は目を見張るものがあります。それは『エステティックグランプリ』を見ても明らかで、その向上心に応えるためにも、ぜひ指導者が育ってほしいと思います。
欧米流教育モデル導入で差をつける!ICAM×ミシュラン式ノウハウ
欧米は教育システムをすでに輸出しており、その理由は、国内の資源が乏しく生産に頼れないという国が多いのです。彼らが作るのは、ソフト、教育、コトです。モノなんか作らない。日本も資源が乏しくなっていくわけですから、欧米のやり方を目指すべきだと思います。欧米では、モノを作ったとしても、モノをプロモーションするわけではなく、「コト」をプロモーションしています。世界観を表現するなど、「コト」を売ることができれば、インテリジェンスは高まります。
モノだと価格競争に陥ってしまいますが、仕組みやフレームは持ち運びが自由。“うちのやり方なら、この化粧品、この機械ではないと絶対にだめ”という、これを作り上げることができれば強いのです。競争が起こった時に、残るのはこの仕組みが強い会社だと思います。
ビジネスの発展を考えるならば 教育の見直しは不可欠
大手企業はすでに始めていると思いますが、今後は中小企業・サロンも挑戦すべきですね。教育が事業の新しい軸になるとキャッシュになりますし、業務の効率化が図れますから、フランチャイズ展開も視野に入ります。また、メソッドや技術を本やテキストにまとめて販売することもできますね。美容業はこれまできわめて労働集約的な業界でしたが、教育を一つのパッケージとすることで、新たなビジネスにすることができるのです。一方で、非常に個性的な、カリスマ性のあるエステティシャンが率いているサロンもあります。それはそれでいいのですが、規模を大きくしようとすると、そのエステティシャンが何をもってカリスマなのか、その技を他のスタッフも真似できるようにしなければなりません。その時に教育が大切になるのです。そしてこの教育体制は、そのままビジネスになるということですね。
技術の“型化”で教育→商品化!見える化が生む新収益
サービスや情報など形のないものを売るというビジネスであるコンテンツビジネス。サロンには4つのコンテンツがあると思います。
(1)技術(2)商品(3)体験価値(4)独自性のあるメニュー。そしてこのうち、(4)に課題があると思っています。例えば、フェイシャルメニューはどのサロンもそれほど変わりはありません。どこをどのようにこだわってコンテンツ化するのか、これが今、問題だと思っています。暗黙値を形式化する、“なんとなく”を見える形にするというのは非常に大事で、これが勝てる要因になります。
ビジネスとしてなかなか広がりができないサロンは、何が自分たちの武器なのか、強みなのかが理解できず、言葉にできないサロンが多いと思っております。一方で、「経験」「勘」「暗黙値」といったものを「型」にすると、ビジネスとして大きく飛躍します。ベテランの技を「見える化」すると、新人でも真似できるようになるからです。現在大手と言われている企業は、これができています。そしてここからが重要なのですが、技を型にできている会社は、自社の教育そのものをビジネスにできるのです。これがさらなる飛躍へのフックになります。
ある種の階段を作り、初心者が上級者になるまで、ステップアップできるようにする。自分たちの技を体系化し、上級者までの道のりをクリアーにすると、教育が学校になるのです。
教育ビジネスこそがこれからの成長ビジネスだと思っています。海外展開を考える際も、出店ではなく学校を開く方が現実的ではないでしょうか。インターネットとスマートフォンの普及とアプリの一般化で、現代は机と椅子を用意した学校がいらない時代ですから、講師を派遣してウェブで授業を配信することができる。コストもそれほどかかりません。
エステティックサロンの今後の成長を考えた時に、教育は大きな強みになるのです。型、見える化、マニュアル化、形式値化することで、誰もがベテランの技を習得できるようになる。この、“誰もができる”というのが生き残りの秘訣です。
自己実現サロンの作り方!マーケ4.0×基礎技術力の両立
美容業界、エステティック業界において、サロンのどのような点を顧客に訴求するかが難しくなってきています。まだエステティックが定着していなかった時代は、技術の善し悪しで差別化を図っていました。これが「マーケティング1.0」です。しかし、業界全体のレベルが向上してきた現在、技術力があるというだけでは、顧客には魅力として映らなくなってきています。
顧客満足や消費者の意識を大事にし、顧客が何を考えているのかを優先して考える。これが「マーケティング2.0」。サロンが提供したい価値観や世界観を確立し、顧客の共感を得るというのも現在の流れです。これが「マーケティング3.0」。
さらに、「自己実現を叶えるのがサロンである」という考え方が「マーケティング4.0」であると考えます。例えば、顧客は“痩せたい”“キレイになりたい”とサロンに来るのですが、それを“自分らしい人生を叶える”といった別のワードに置き換え、それをその人の自己実現と捉えて応援する。また、その欲求をサロンとして、スタッフとしてサポートするのが使命である、とスタッフの働きがいを重視する。これがサロンで自己実現を叶えるということですね。
ただ、大事なのは「マーケティング1.0」から「マーケティング4.0」までは「切りかわり」ではなく「積み重ね」であるということ。最近問題だと感じているのは、かけ声はいいけれど、中身が伴っていないなというサロンが多いことです。顧客やスタッフの自己実現を図ることを目的にしてはいるけれど、肝心な技術や接遇が追いついていない。バックヤードに入ると物が散乱している……。基礎的な足腰ができていないと、「マーケティング4.0」を目指していても、結局は価格競争に陥ってしまうのです。
サロンが提供したい世界観を創り出したあと、それをいかに技術に落とし込むかというところを考えなければ、絵に描いた餅になってしまいます。
“ご贔屓様”が宣伝部長!リファーラル率最大化の極意
今回は「リファーラル率」についてお話しましょう。ビジネスにおける「紹介」という意味で、美容業界においては、クチコミ紹介率、宣伝率のことを指します。 “生涯顧客を作りたい”というのは、どのサロンも望んでいるはず。しかし実際にはとても難しい。そこで、自サロンをご友人に紹介してくれるお客さまがいるかが鍵になってきます。リファーラル率は、売上げの上位5%を占めるお客さまと言われています。この方々はサロンの宣伝部長ですから、どんなメディア(マスコミ)よりも大事なのです。その目安が「クチコミ宣伝率=リファーラル率」です。さらに、ご贔屓さまが紹介してくれたご友人は新たな優良顧客となることが多いのです。
新規顧客の獲得ばかりを重視すると消耗戦になり、人口減少時代にはもう期待できません。ご贔屓さまが紹介してくれた新たなお客さまを2回目、3回目の来店とつなげて優良顧客化すべき、というのが私の考えです。
ただ、注意しないとネットワークビジネスになってしまいますので、手法や数字にとらわれないようにしなければなりませんね。自然に推薦してくれる。これがベストです。
口コミを戦略化する経営手法!自然発生的な紹介を促す仕組み
サロンの宣伝のために広告を出しているところも多いと思います。しかし、どれほど顧客化につながったのかを計算したことはあるでしょうか。種を蒔いても戻ってこないというのが実状ではないでしょうか。そこを考えると、ご友人を紹介してくれる方がどれほどありがたいかがわかるはず。大事にすべきご贔屓さまをしっかりと見極めるべきなのです。
ホテル業界ではリファーラル率について、研究と実践が進んでいます。お客さまをファンにするための工夫が随所に凝らされており、さらに接客するスタッフに大きな裁量権を持たせているケースも多いのです。「あのホテルは良かった」とクチコミで広がるのを戦略的に考えているのです。
クチコミサイトもありますが、これはただの「システム」。とても人工的でケミカルなものです。本来のクチコミはもっと自然発生的なもので、オーガニック(有機的)なもののはず。自然なクチコミは、広告の何倍も価値があります。
エステティックサロンで、VIPのお客さまだけを集める「ファンミーティング」を開催しているサロンがあると思いますが、これは良い仕組みだと思います。また、アニバーサリーに一言添えるなどの工夫もいいですね。リファーラル率を上げるためには、顧客管理、スタッフへの教育、仕組みづくり、マインドの共有も必要になってきます。
顧客の“メガネ”をかける提案術!価値観に寄り添うヒアリング法
今回はサービス・美容業におけるQOLについて考えてみましょう。サービス業、とりわけ美容業においては、お客さまの価値観、生活の質、あり方を見る「メガネ」が必要だと思っています。例えば、「脱毛」を勧めるにあたり、そのお客さまに脱毛をした後に何が変わるのかということを想像、提案しなければなりません。
「売りたい」だけの営業、売り方ではダメで、どれくらいの金額を美容に費やすお客さまなのか、趣味は何か、家族構成は、家は……そこまで考えて提案しなければならないのです。「痩せたい」「脱毛したい」というお客さまに対して、「なぜこの方はそうしたいのだろう」と考え、その背景を理解し、それを踏まえるべきだということです。
背景分析×課題解決で刺さる提案!データドリブンな営業トーク
競合、社風、社内制度といったものからその会社の状況を把握する、こうした背景を掴めれば、オーナーの思いも見えてきます。サービス産業も営業マン的側面がありますから、この考え方は大いに役立つはずです。“自分とはまったく違う好みを持っているという人がいる”ということが、本当の意味でわかっていない人が多いのです。例えば、いま支持されている「IKEA」や「ドン・キホーテ」が、なぜこれだけ多くのお客の心をつかんでいるのか。そこには、自店がターゲットとする顧客が大事にしているものを理解し、それに合わせた店作りがあるからなのです。お店に行ってみるだけでも勉強になるのではないでしょうか。
“ゲーム感覚”で楽しむエステ!遊び要素が生むリピート効果
美容室の定番メニューとしては、カット、パーマなどの「デザイン」系と、ヘッドスパやヘアマニュキュアなどの「ケア」系に大まかには分かれますが、最近はケア系のメニューへのニーズが高まっているし、そこを充実させると、顧客への提案の幅も広がります。
それでは、すべて「ケア系」ともいえるエステティックの場合はどうしたらいいでしょうか。私は「ボディメンテナンス」という領域をもっと充実させてメニューを増やし、売上げを高めるべきではないかと思っています。
一例ですが、“遊び感覚”“ゲーム感覚”のエステティックというのは考えられるかもしれません。『ライザップ』がこれだけ成功しているのにはたくさんの要因がありますが、一つは“遊び感覚”で減量・ダイエットを楽しむことができる、というのもあると思います。
エステティックも、何かオリジナルの技術やアプリなどを使って痩せたり、キレイになったり、という、遊びの感覚を刺激するような工夫があればいいのでは、と思っています。
売り方刷新で需要拡大!エステ体験の再定義マーケティング
要は、これまでどおりのことを淡々とやっているだけでは厳しいということです。エステティックは人間の生き方、ライフスタイルに密接に関わってくるものであり、売り方を工夫するだけで、もっともっと大きな需要が見込めるのではないでしょうか。エステティックは「上質」「高級」「特別」を打ち出すのではなく、もっと売り方を見直すべきだと思います。
野嶋 朗(のじま・あきら)/1988年株式会社リクルート入社 進学情報・キャリア・地域活性・広告宣伝領域で事業企画、商品企画、人材育成、営業戦略などに関わる。メディアプロデュース部部長 進路情報部部長 進学事業カンパニーオフィサー 北海道支社長 街の生活情報事業ユニット長 などを務める。2011年株式会社リクルートライフスタイルビューティ総研設立。
2