第12回「“がむしゃら”からの脱皮」

先輩経営者と

トライアスロンチームを組む

ただ、起業してから10年近く経った頃、30代半ばぐらいだと思いますが、体力的な衰えを感じるようになったんです。メンタルに関しても、これまで若さあってのエネルギーでがむしゃらに走ってきたけれど、ちょっと方向転換しなければもたないな、と感じた時期がありました。ちょうど会社としても規模が大きくなっていって、当時の社員数は200人ぐらいだったと思いますが、経営者として自分たちに求められる役割がだんだん変わっていったこともあります。それで、他の経営者の皆様の思考の仕方とか、コミュニケーションの取り方とか、これまで以上に先輩の方々にお話を伺いたいなと強く感じるようになったんです。

そんなときにたまたまご縁があって、40歳から60歳代ぐらいまで、様々な業種で活躍されている経営者の皆さんのトライアスロンチームにメンバーの一人として参加させていただくことになりました。それまでは、化粧品やIT関係の近しい業種の、世代も近い経営者の方と交流する機会が比較的多かったんですが、自分よりはるかに上の世代の、そして長く、大きな会社を経営している方々とお話をする機会というのはあまりなかった。そして、このご縁がその後の自分にとって非常に大きな学びとなりました。「こんなに大先輩でもこういうことで悩んでいらっしゃるのだな」と知り、「なんだ、自分の悩みなんて本当にちっぽけだな」と思ったり、ご苦労話を伺って「自分ももっと腹をくくってこの課題を何とかしなければ」と思ったり……。しかも深くお付き合いさせて頂く中で、ビジネスだけでなく、個人的なお話も伺えたので、皆様の人となりにも触れて、より先輩がたを身近に感じることができたんです。

ちょうどその頃、2008〜2009年ぐらいでしたが、リーマンショックや大きな環境の変化があって、アイスタイルは上場準備を直前まで進めたタイミングで、自主的に申請を取り下げるという決断をしています。こうした激動の中で悩んだり葛藤したりしていた部分もすごくありましたが、そういう時も色々なアドバイスをいただきました。脱皮した、というと大げさなんですが、視点の持ち方や考え方が変わるきっかけも多々いただきました。トライアスロンは大会に出たり、ご一緒にトレーニングをしたりしますので、単なる飲み会のように単に集まっておしまい、ではない、もっと深い人間関係を構築することができたんです。もちろんこれを意図してトライアスロンのチームに入ったわけではないのですが、本当に親しくなって、なかでは家族ぐるみで今もお付き合いしていただいている方がたくさんいらっしゃいます。こうしたご縁に恵まれた事を本当に感謝しています。

経営という役割を

担うことへの感謝

当時も今も、仕事に対してはお陰様ですごくやりがいを感じていますし、経営という一つの役割を担わせていただけることに対しての感謝があります。役割をいただき仕事をさせていただいてきたなか、どうしたら自分として最大の力を発揮することができるのだろうか、と考え続けてきた経営者人生だったと思います。ですので、30代後半まで、プライベート中心の生活を送ることや、子どもを産みたいといったことは正直まったく考えていなかったんですね。たまたま縁と幸運に恵まれ、2児のワーキングマザーになりましたが。

今の若い女性は、早いうちから自分のキャリアプランやライフプランを照らし合わせて、計画的に「いつ産もう」と考えている方が多いのかもしれません。もちろん、そのほうが絶対にいいと思います。自分はそうではなかったので、あまり具体的なアドバイスはできないですが……。ただ、まだ起こっていないことを心配しすぎて、目の前のチャンスに挑戦できなくなってしまったりするのはもったいないことだなとも思います。ぜひチャンスはどん欲につかみ、公私ともに自分がありたい姿をめざしていっていただきたいなと感じます。