株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO私の使命
インタビュー・山田メユミさん
監修:美容経済新聞
第24回「仕事においては感謝しかない」
社のビジネスを自分のものだと
考えたことがない
使命というと大げさですが、仕事に関しては「この役割を天から与えていただいている」「働かせていただいている」という気持ちが大きいです。
『@cosme』という事業はもともと、生活者、特に一般の女性お一人お一人の声を集めて、それをお預かりしてデータベース化することで、ユーザーと化粧品のより良い出会いを提供するという発想からできたものです。自分たちの力だけで成り立つビジネスではなく、多くのユーザーやブランドの皆さんから信頼いただいて、口コミや商品情報をお預かりしているからこそ成り立っているビジネスだと考えています。皆さんの口コミや商品情報といったデータそのものが我が社の根幹。そう思うと、ユーザーの皆さんに対してはもう感謝しかないんですね。私は経営者ではありますが、自社のビジネスを自分たちの所有物のようにとらえる視点は、そもそも持ってきませんでした。それは創業のときから変わりません。
私たちが創業したタイミングでインターネット人口が少しずつ増えて、生活者のなかでインターネットが必要不可欠になってきた。そんななかで、化粧品や美容という分野は『@cosme』、アイスタイルが担わせて頂いてきて今があります。ホテルやレストランを選ぶときに、インターネットを使って消費の選択をするのは当たり前の世の中になりました。そのなかで、たまたま化粧品や美容という分野を私たちが担当している。そう考えると、自分たちで努力してきた部分はもちろんあると思うのですが、それだけではなく、社会の後押しや天から与えられた使命として自分たちが存在しているのだという気持ちが常にあるんです。会社として苦しい時期もたくさんありましたが、それも多くの方が支えてくださったからこそ、今の自分たちがあると思っています。
現在の私は経営者という立場にはありますが、それはあくまでも自分がいただいた役割であって、自分で作り上げてきたものではないと感じています。だから、その与えていただいた役割に対して、どのように最善を尽くすか、ということを日々考えて生きてきたように思います。
大企業の社外取締役に就任
ベンチャーで得たことを発信したい
実はいますごく貴重な機会を与えられていまして、2017年に「セイノーホールディングス」と「かんぽ生命」の社外取締役に就任しました。どちらも、当社よりもはるかに歴史が長く、規模も大きい会社です。ベンチャーの経営しかやってきたことがない身で、どういう形で貢献ができるのか、日々悩みながら務めておりますが、とても有意義な学びを頂いております。一方で、ベンチャーだからこそ自由度をもって経営に携わってきた経験をもとに、各社の役員の方に「このようにやってみてはどうですか」と発信するようなこともあります。これだけ大きく社会環境が変わって、特にITもインフラとしてこれだけ発達して、消費行動も変化している。歴史ある企業が必ずしも安泰という状況ではなくなってきていて、大きな企業でも、次の一手に悩まれていらっしゃると思うのです。大企業とベンチャーのコラボレーションももっと積極的になされないと、次の未来は描けないだろうとも感じます。でも、歴史ある大企業だからこそ、持っていらっしゃる資産や強みもある。ご縁があって社外取締役という役目をいただいたので、生活者、特に多くの女性に近いところで活動してきたことで感じる生活者視点で発信していきたいですし、同時に大企業の経営を学ばせていただいて、自社に持ち帰えれればとも思っています。
株式会社アイスタイル
取締役 兼 CQO
東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。
化粧品メーカーなどを経て、1999年に個人で発行していた化粧品のメールマガジンをきっかけに『@cosme』を企画立案、サイト立ち上げに参画。アイスタイルの共同創業者であり、現在も同社取締役兼CQOを務めるほか、経済産業省等の消費およびインターネット関連委員も歴任している。2017年より、株式会社かんぽ生命保険、セイノーホールディングス株式会社の社外取締役を務める。