株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO私の使命
インタビュー・山田メユミさん

インタビュー

監修:美容経済新聞

第7回「苦労した化粧品会社との関係」

 

 

ブランドイメージを大事にする化粧品会社

ネット活用の普及には時間がかかった

 

好例に『大島椿(大島椿株式会社)』というヘアオイルがあります。レトロな瓶で、おばあちゃんの鏡台にあって……若い人が使うというイメージでは正直なかった。でも『@cosme』で「これはすごくいい!」という口コミが広まって、「クチコミを見て試してみたら本当に良かった」という声がどんどん寄せらていきました。メーカーの方からも、「若年層や新しいお客さまが増えて売上げも数倍に伸びました」という評価をいただいたんです。『大島椿』はインターネットならではの商品との出会いですよね。こうした部分は今でもとても大事にしています。「@cosmeがあったからこんないい商品に出会えた」「試してみたらとってもよかった、ありがとう」−−−−ユーザーの方からのお礼の声というのは未だにメールや口コミの中でいただいたりすることが多いのですが、これは今も昔も私たちスタッフにとって大きなやりがいです。利用者の方からの「ありがとう」があるからやっていけるなぁ、と本当に思いますね。

ただし、メーカーの方にご理解いただくのは、最初の数年はとくに難しかったんです。 化粧品会社というのは、ブランドイメージを大事にされるところが本当に多い。そもそも化粧品というのは、ある種“憧れの存在”でなくてはならないところがありますから。当時は、いえ、今でも、雑誌広告など美しいビジュアルの打ち出しは欠かせません。だから、化粧品会社がインターネットを本当の意味で活用されるようになったというのは、割と最近のことなんです。99年当時というのは、オフィシャルサイトをお持ちでない会社も珍しくありませんでした。あったとしても、商品カタログだけを載せているようなところも多かったですね。

 

当初は協力を得られなかったメーカー

消費者のニーズは必ずあると信じた

 

だから、『@cosme』立ち上げからの数年間は、メーカーさんとの関係性の構築も本当に難しかったですね。インターネットで、かつ匿名で、もしかしたら悪口を書かれるかもしれないようなサイトに、自分たちの商品情報を出してくれるなという会社さんも少なくありませんでした……。有償なんてもってのほか、無償であっても、商品情報さえいただけないという関係が長らく続きました。。ですから、最初は、自分たちで情報を集めて、商品の撮影もして、自前でデータベースを作るしかなかった。でも、消費者の方からの『@cosme』への期待やニーズというは間違いなくあったんです。 ユーザーに支えられて次第にサイトの規模が大きくなり、生活者の商品選びに影響力を持ちはじめると、少しずつ各社さんから公式の商品情報をいただけるようになっていきました。ブランドイメージのコントロールに特に慎重なラグジュアリブランドも含めて、こういったお付き合いが可能になったのはここ10年ほどのことでしょうか。 商品情報をご提供いただく以外にも、イベントを共同開催したり、モニター企画をご一緒したりと、コツコツとメーカーさんとの信頼関係を築いていきました。それが次第に、大きな広告出稿やマーケティングのお手伝いにもつながっていきました。

もちろん、ここまで来られたのは『@cosme』の成長だけが理由ではありません。世の中でマスメディアに匹敵するメディアとして、インターネットが認知されるようになったし、パワーを持つようになりました。それに伴って企業のほうでもインターネットの捉え方が変わってきて、関係性も変わってきたのだと思います。

株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO 山田メユミさん

株式会社アイスタイル
取締役 兼 CQO


東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。
化粧品メーカーなどを経て、1999年に個人で発行していた化粧品のメールマガジンをきっかけに『@cosme』を企画立案、サイト立ち上げに参画。アイスタイルの共同創業者であり、現在も同社取締役兼CQOを務めるほか、経済産業省等の消費およびインターネット関連委員も歴任している。2017年より、株式会社かんぽ生命保険、セイノーホールディングス株式会社の社外取締役を務める。
文=岡本茉衣 写真=是枝右恭

#

↑