株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO私の使命
インタビュー・山田メユミさん

インタビュー

監修:美容経済新聞

第21回「“これからの社会とは”−−−−尽きない興味」

自分の事業領域以外にも

視野を広げる

今は人生100年時代と言われていて、大人の方の学び直しの機会が増えていると思いますが、実は私も昨年の秋から半年間、東京大学の「エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)」に通っていました。受講者は経営者や官僚、大企業の幹部候補生の方々ですが、いわゆるマネジメント論の講座ではないんです。もっとリベラルアーツというか、日本、世界で起きているさまざまな社会問題の背景に何があるのかということや、最先端の生物工学や宇宙進化学など、普段の生活ではあまり接しない領域のことを、第一線で研究している教授陣から学んで自分なりに未来を考えていこうという内容です。週末の2日間、朝から晩までみっちり通ったのですが、自分にとっては約20年ベンチャーで走ってきた、ひとつの“ご褒美”でした。職場の仲間にも無理を言って協力してもらい、なんとか時間を作って無事、修了まで通えました。子どもにも「ママ、これから学校通うから協力してくれる?」と言って。

学び直しのきっかけは様々ありますが、これまで会社を経営してきて、自分たちのいる領域のことに集中してきましたし、そうすべきだったわけですが、振り返ると「視野が狭くなってしまっていないかな」と感じたことが大きな要因です。化粧品を生活者の消費の環境の中の一つと考えたときに、化粧品は間違いなく成熟しきった産業ですし、使われず廃棄されてしまっているものも多い。「サステイナブルな事業の発展とはどういう形なんだろう」と考えたときに、業界のことだけを考えていたら、たぶん答えは出ないと思うんです。だから、自分がこれまでなかなか手を広げられなかった、自分の仕事の領域以外の、社会人として知っておくべき学問を改めて学びたいと考えたんですね。

サステイナブルな社会とは?

そのなかで社が担う役割とは

東京大学の「エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」では80冊以上の課題本を読破する必要がありました。その中の一冊として渡されたのが「新ビジョン2050」(小宮山宏、山田興一/著、日経BP社)です。2050年に向けて社会はどう活動すべきかということが書かれています。現在は少子化、高齢化で労働人口が減っていると言われていますが、振り返ってみると、これだけ世界の人口が爆発的に大きくなったのはたかだか200年ぐらいのこと。日本だってそうですよね。それで様々な問題が発生しているわけですが、ではどこが人口の適正値で、どうしたらサステイナブルなビジネスや環境、ライフスタイルが生まれていくのか、ということを考えるひとつのきっかけになりました。

会社としても、プロダクト中心の化粧品関連事業から、女性のライフスタイルのなかでのビューティへと事業の領域を広げてきています。サービスも日本国内で始めたところから、少しずつアジアを中心としたグローバルな事業へ展開を推進しようとしています。そういうときに、「自社が、自分が次に担うべき役割は何だろう」と、視野を広げて考える時間が必要だと感じていたなかで、ちょうど出会った本ですね。

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株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO 山田メユミさん

株式会社アイスタイル
取締役 兼 CQO


東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。
化粧品メーカーなどを経て、1999年に個人で発行していた化粧品のメールマガジンをきっかけに『@cosme』を企画立案、サイト立ち上げに参画。アイスタイルの共同創業者であり、現在も同社取締役兼CQOを務めるほか、経済産業省等の消費およびインターネット関連委員も歴任している。2017年より、株式会社かんぽ生命保険、セイノーホールディングス株式会社の社外取締役を務める。
文=岡本茉衣 写真=是枝右恭

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