株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO私の使命
インタビュー・山田メユミさん

インタビュー

監修:美容経済新聞

第14回「不妊治療からの出産」


働きながら通院する

長く続く日々

今はいろんな会社で不妊治療休暇が取れるような制度が導入されつつあります。一人ひとりの事情や社員のライフステージに寄り添って、柔軟に働いていただける環境づくりをすることは不可欠です。でも、すべての会社がそうした制度を導入することや、女性が制度をフルに活用することは、現実にはなかなか難しいことだと思います。

自分の不妊治療の経験を通して感じたのは、社会の変化に合わせて、クリニックもいろんな環境にある女性に柔軟に対応してくださるところがもっと増えたらいいな、ということ。例えば、都心部は特にそうだと思いますが、出社前や退社後に通えるクリニックというのは需要が大きいと思います。難しさもあるとは思いますが、クリニックをはじめ不妊治療にまつわる選択肢の幅が、今の女性のライフスタイルに合わせて広がっていくといいなと願っています。

不妊治療は女性に肉体的・心身的な負荷がかなりかかります。薬を摂取したり、自己注射を打ったりという肉体面はもちろん、メンタルな部分でもきついですよ。一回一回、「○」や「×」という結果が出るのは、覚悟していてもやはり辛いものがある。やっぱり取り組んでいる以上、「○」が欲しいわけですが、待ち望んでいるのに「×」が続くと、さすがに……。働きながらだと、仕事のスケジュールを調整するのも、どうしても周囲に負担がかかったり、それをきっかけに摩擦も起きたりしがちでから、そういう面でも消耗します。両立は本当に大変なことだと思います。

前日まで働いて出産

3日後からは病室で打ち合わせ

不妊治療と仕事の両立は本当にタフなものだと思います。急に仕事で大事な予定が入り、その日に入れていた診察をどうしてもキャンセルせざるをえないことが起こる。私も度々そういうことがありましたが、そんなとき、最初に通った有名クリニックで「あなたは不妊治療と仕事、どっちが大事なんだ?」と医師に言われて、泣きながら帰宅したことがありました。先生は先生で一生懸命取り組んでくださっているからこそだと思うのですが、こっちもこっちで必死ですから悲しくて……。

私は本当に幸運なことに子どもに恵まれて、今は2人の母となりましたが、これは奇跡的な事だと考えています。神様に授けて頂いたと心から感謝するのみです。

2012年のはじめごろから本格的に治療を始めて、その年の11月にアイスタイルは東証一部へ市場変更するのですが、ちょうどその頃に妊娠をしています。第一子の誕生は翌年の7月ですが、そんなバタバタな時期でもありましたので、結局出産の前日まで働いていましたね。「身体的に無理なくできるところまでやろう」と思って働いていたら、結局経過も良くて前日になっちゃいました(笑)。産むと決めていた病院は会社の目の前でしたので、自宅にいるよりも会社にいるほうが病院に近いという安心感もあって、予定日に近い頃は、いつ何があってもいいように入院セットを会社に置いていましたね。それで、「何かあったら運んで」って同僚にお願いしていました(笑)。

なんとか無事に出産したのですが、産んで3日後には病室にメンバーが来て寝ている赤ちゃんの横で打ち合わせをしていましたね。だから、このペースなら一ヶ月ぐらいで仕事に復帰できるなと思っていたわけです。でも一人目のときは、出産が女性の身体にどれだけ負担になるかとか、授乳のサイクルが整うまで意外に時間がかかるとか、まったく知らなかった。他の先輩ママさんとお話するとか、出産前にいろいろな前情報を得ておくとかという諸々の準備をすっ飛ばして出産してしまったので、当時の自分は恥ずかしいほどに無知で、結果的にそのあと大きく体調を崩してしまうんです。

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株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO 山田メユミさん

株式会社アイスタイル
取締役 兼 CQO


東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。
化粧品メーカーなどを経て、1999年に個人で発行していた化粧品のメールマガジンをきっかけに『@cosme』を企画立案、サイト立ち上げに参画。アイスタイルの共同創業者であり、現在も同社取締役兼CQOを務めるほか、経済産業省等の消費およびインターネット関連委員も歴任している。2017年より、株式会社かんぽ生命保険、セイノーホールディングス株式会社の社外取締役を務める。
文=岡本茉衣 写真=是枝右恭

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