株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO私の使命
インタビュー・山田メユミさん

インタビュー

監修:美容経済新聞

第8回「自分たちがつかみ取ったニーズは確かだ」

 

資生堂のある担当者との出会い

新しい企画が突破口に

化粧品会社さんはeコマースに関しても慎重でいらっしゃいます。既存の流通網への配慮もあって、他業種に比べてeコマースの広がりはゆっくりとしたペースでした。今はだいぶ状況が変わり、Amazonや楽天などに出店されているブランドもありますが、現在でもまだ取り組んでいないところもありますよね。ブランドイメージを壊さずに、いかに消費者の方に商品を手にとってもらうか……トライアンドエラーを繰り返しながら、皆さん取り組んでいらっしゃるのだなと感じています。 『@cosme』ができた頃は、インターネットがまだ花開いたばかりで、懐疑的な声も少なくありませんでした。。そんななかでも、企業というよりもブランド単位ででしょうか、新しいことにチャレンジしてみようというところがいくつかあって、「こんな企画を一緒にやってみませんか」と声をかけてくださったんです。企画が面白いと、参加者からブランドのファンが生まれます。すると、他社さんから「うちもやってみたい」とお声がけをいただくことが多くなってきました。そして、次第に成功事例が増えていったんです。

なかでも、資生堂さんとは、2001年、2002年ぐらいの『@cosme』黎明期からご一緒させていただいています。最初は資生堂の研究所訪問でしたでしょうか。あるブランドの担当者の方が、「インターネットは可能性がある。しかも『@cosme』はちょっと面白い」と発掘してくださったんです。そこで、企業見学ツアーを提案して企画を実施して頂いたんです。ユーザーさんをお連れして、通常は一般の方が入れないような研究所や工場の中を見学させていただいたんですが、普通の消費者は研究者の方から商品への思い入れや開発ストーリーを直接お聞きするチャンスってなかなかないですよね。すごく好評でしたし、参加した方は皆さんそのブランドのロイヤルユーザーになってくださったんです。なおかつ、そのツアーがサイト上で、レポートのような形で他の方にも見ていただけた。イベントに参加した方の声を聞いた方もファンになっていく−−−−−好循環ですよね。

 徹夜と苦労の連続

それでも喜びのほうが大きい

この資生堂さんとの取り組みは、インターネットならではのインタラクティブ(双方向)な企画だったと思います。今でこそSNSが普及して、生活者の間でのコミュニケーションというのは当たり前になっていますが、当時はなかった。企業としても、情報を提供して終わり、ではなく、参加した方の生の声が寄せられたり、レポートを見た方からの反響がわかったりというのは新しい可能性を感じていただけたのではないでしょうか。今では資生堂さんはもちろんのこと、多くのメーカーさんとお付き合いがありますが、やはり2000年初頭に資生堂さんに機会をいただけたというのは、自分たちにとって次につながる大きな突破口となりました。

振り返ってみると、会社設立後の2000年ぐらいというのは、自分たちは30歳になるかならないか。スタッフ達も同世代か、ちょっと下ぐらい……。平均年齢は25歳ぐらいだったのではないでしょうか。会社としても若かったですが、自分たちも若かった。いろんなことを若い力で強行突破してきたという感じですね。夜な夜な徹夜して、朝昼晩、盆暮れなく働いた。ワークライフバランスという今の時流に完全には逆らっていますが(笑)。苦労がなかったかというと、それはもう苦労の連続なんですが、当時は苦労を苦労だととらえなかったというのが正直なところですね。それよりも、喜びや手応えのほうが大きかった。『@cosme』は自分たちの想像よりもはるかにたくさんの方が支持してくださって、利用者が増え、口コミが増えていった頃ですから、自分たちが捉えた課題や社会のニーズといのは間違いなかったんだと感じていましたし、インターネットだからこそ、それをリアルタイムにに体感できたんです。だから、何としても事業を継続させなければ、という使命感のような思いに駆られて毎日を過ごしていました。

株式会社アイスタイル 取締役 兼 CQO 山田メユミさん

株式会社アイスタイル
取締役 兼 CQO


東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業。
化粧品メーカーなどを経て、1999年に個人で発行していた化粧品のメールマガジンをきっかけに『@cosme』を企画立案、サイト立ち上げに参画。アイスタイルの共同創業者であり、現在も同社取締役兼CQOを務めるほか、経済産業省等の消費およびインターネット関連委員も歴任している。2017年より、株式会社かんぽ生命保険、セイノーホールディングス株式会社の社外取締役を務める。
文=岡本茉衣 写真=是枝右恭

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