第1期対談第11回 市場開拓の余地あり! “オヤジ”たちに注目せよ

2015.12.1

業界展望

編集部

女性をターゲットにしているだけでは売上げに限界を感じている経営者も多いのではないだろうか。バブルを経験した「オヤジ世代」に市場開拓の余地があると、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。男性マーケットの可能性について、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

精神的なゆとりがある
オトコ磨きをしたいオヤジたち

花上 男性の美容ニーズに注目が集まって久しいですが、現在のトレンドを教えてください。

野嶋 男性マーケットは二つの世代に分けられます。一つは、20歳代後半から30歳代前半までの若者層。いわゆるゆとり世代ですが、きれい好きで派手を好まない。女性上司への配慮がある男性たち。もう一つは、40歳代後半から50歳代前半のオヤジ世代。カタカナで「オヤジ」と書くのがポイントです。どこかバブルの残り香があり、派手で女好き、思考がマッチョ。雇用機会均等法第一世代ですから、女性上司の経験が多くないという男性たちです。

花上 バブル世代の男性については、これまでの対談の中でも何度か登場していますね。

野嶋 美容サービスにおいて、開拓の余地があるのは後者の方です。この世代はスキーやスノーボードなど、アクティブに余暇を楽しむ人が多い。“年甲斐もない”と 言うべきか、現役感を捨てきれずにいる。さらに、子育てが一段落して遊びゴコロがムクムクと湧いてきた。共働きの家庭も多く、経済的にも余裕がある。まだ男でいたい、歳をとりたくない、モテたいと思っていますから、美容に対してニーズがあるんです。

花上 オヤジ世代の中でも、夜遊びが大好きな人と、それを卒業してジムやランニングに勤しむ人と二極化しているように思います。

野嶋 そうですね。ただ、ブランド物の自転車に乗ったり、カッコいいウェアを着たりと、とても身なりにこだわっているように思います。両者に共通しているのは、とにかく「身づくろい」をすること。似合うスーツを着る、バランスの良い体型を保つ……オトコ磨きをしたいんですね。

バーバーは粋なバーであり
男性にとっての「エステ」である

花上 こういう男性を受け入れる美容サービスが求められていると。

野嶋 その通り。例えばいま、粋なバーバーが増えていますね。シェービングが気持ちいい、ヒゲをケアしてほしいという男性に支持されています。

花上 私もまさにおしゃれなバーバーに通っている一人です。女性も来るようなお店なのですが、雑誌を読んだり、雑談をしたり……ここで過ごす時間は何ものにも代えがたい。

野嶋 粋なバーバーは、なじみのバーに似ていると思いませんか? 寛いで至福の時間を過ごせるという、日常の中の非日常が味わえる。こういう場所が実は少ないんです。

花上 確かに、若い女性スタッフばかりの美容室には少し行きづらいですね。ファミレスのような明るい雰囲気のサロンもあるけれど、もう少し落ち着いたお店でゆっくりしたい。時間をかけてでも、粋なバーバーに足を運びたい。かといって、貴重な休日の時間をすべて費やすほどではありませんが。

野嶋 また、バーバーは男性にとってのエステのような存在だと思います。これまで「男性向けのエステ」というと、どちらかというとスリミングが重視されていたように思います。しかし大半の男性は、蒸しタオルで顔を拭いてもらって、丁寧にシェービングしてもらう方に癒しを感じる傾向がある。バーバーでのグルーミングはまさにエステですし、ヘッドスパを提供しているバーバーもありますね。こういうニーズを把握しておくと、店づくりのヒントになると思います。

気になる「女子」の目線
オヤジの身づくろいへのニーズを掴め!

花上 オヤジ世代も外見が気になります。

野嶋 職場の若い女性によく見られたいという願望はありますよね。モテたいし、異性の目が気になる。いま鼻毛脱毛がブームですが、他にも加齢臭対策や薄毛ケア、ヒゲ脱毛、胸毛ケアなど、何かしらの対策を講じているオヤジが増えています。

花上 理容室はそれをケアしてくれる場所としてとても通いやすい。ただ、理容業界は相変わらず厳しいですね。

野嶋 後継者不足は相変わらずの状況です。ただ、若いオーナーがおしゃれなバーバーを作り始めていますね。アンティークの椅子があったり、シェービングのブラシに凝ったりと、新たな風は巻き起こっています。

花上 男性エステというと、風営法の関係で店づくりが難しい時もあります。しかし男性の身づくろいへのニーズは確かにありますから、ぜひいいお店が増えてほしいですね。今日はありがとうございました。

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2015年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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執筆者:編集部

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