第1期対談第19回 企画とコミュニケーションこそが広告宣伝となる
2016.08.1
admin
「リキッド・アンド・リンクド(Liquid & Linked)戦略」という言葉を聞いたことがあるだろうか。従来型の広告宣伝の時代は終わり、企画やコミュニケーションを売ることこそが今後の戦略の主軸となると、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は言う。その考え方の詳細と背景について、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。
一つの価値観から
多様化してきた1980~1990年代
野嶋 本日は広告戦略のこれからについてお話ししてみましょう。突然ですが、花上さんは「リキッド・アンド・リンクド(Liquid & Linked)戦略」という言葉を聞いたことがありますか?
花上 どこかで聞いたことがある、という程度ですね。
野嶋 これは、コカ・コーラ社の広告戦略の一つです。「リキッド」というのは、コカ・コーラの商品である飲料と「流動化」のダブルミーニングなのですが、つまりは「流動化させてつなげる」という意味です。
花上 具体的にはどういう戦略なのでしょうか?
野嶋 1980年代、バブルの時代でもありましたが、インターネットがまだ登場しておらず、テレビや雑誌が情報源として重宝されていた時期でした。人々の価値観がまだ多様化しておらず、一つのものが売れていた時代。モノへの消費意欲が高かった時代ですね。
花上 我々が若かった頃のことですね。
野嶋 そして1990年代、データベースマーケティングが浸透し、マーケットをセグメントしてヒット率を上げるという発想が出てきました。マーケティングにおいて、効率的に効果を出すというのが盛んになっていた時代です。
花上 「顧客志向」「顧客満足度」という言葉が生まれましたね。
野嶋 いわば“マーケティング2.0”というか、顧客が何を考えているかを重視するようになりました。そして2000年代が始まります。
花上 ついにインターネットが登場しますね。
野嶋 マーケットが成熟化、高齢化します。価値観やスタイルが多様化し、例えば女性誌も様々な数が出てきました。すると、単一の情報を流しても効率が悪いのです。消費者も、必要な情報だけを取得するというのが一般的になりました。
花上 メールマガジンが流行しましたね。インターネットは情報を「分類」することができるメディアです。
コンテンツを流動化して
どこにでも使えるようにする
野嶋 そして2010年代。ソーシャルメディアが台頭し、「つながり」が重視されます。売場の商品に対しても、何をどのようにリンクするのか、ということが大事になっています。この連載でも度々例に挙げていますが、「DAIKANYAMA T-SITE」では、本の分類がこれまでにない独特な手法でされています。「これが好きならばこのジャンルも好きだろう」と、全く異なるジャンルが隣にあるのですね。
花上 ニトリや大塚家具も同じような印象を受けます。
野嶋 「シェアードワードローブ」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか? 家族でワードローブをシェアすることですね。「コネクト」「リンク」という考え方が重要になってきているのです。オウンドメディア(自社所有のコンテンツのこと。HP、ブログ、紙媒体なども含む)において、コンテンツをどこにでも使えるように流動化し、消費者に提案していくというのが現在の潮流です。
花上 どうしてそのようになったのでしょうか?
野嶋 サードパーティーにコンテンツをとられているという背景があります。文章や写真を「タダのせ」されることが多いのですね。だからこそ、自社を中心にコンテンツを流動化するという流れが重要になっており、注目されているのです。
花上 ソーシャルメディアが欠かせない存在ですね。
野嶋 ハッシュタグで考えるとわかりやすいのですが、例えば「渋谷でラーメンを食べよう」と考えた時、「#渋谷 #ラーメン #背脂少なめ」で検索すれば、だいたい食べたいラーメンの写真が出てきますね。これが「リンクド」。ラーメン店にとってはアピールのきっかけになります。自分たちの強みを自分たちがディレクションすべきだというのがこの考え方です。
花上 広告の時代は終わったということなのでしょうか。
野嶋 従来型の広告ではかなり難しいのではないでしょうか。一方的に宣伝広告するのではなく、顧客とコミュニケーションをとる。広告宣伝部の部署名が変わった企業も多いでしょう。企画を売る、コミュニケーションを売る、そういった考え方がこれからの「広告宣伝」になると思います。
花上 今回は最新のトピックでしたね。大変勉強になりました。本日はありがとうございました。
▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。
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