第1期対談第14回 顧客の「ファン化」にもう一度、注力せよ

2016.03.1

業界展望

admin

価予約サイト頼みの集客で、リピーターは減り、来るのは新規顧客ばかり。店は疲弊し、倒れてしまう。今こそ、顧客を「ファン化」することが大切だと美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。具体的にどうすべきか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

キーワードとして再浮上
お店の「ファン」を作るとは

花上 2016年が始まりました。今年最初のキーワードは何でしょうか。

野嶋 ここにきて、「ファン」というキーワードに再び注目が集まっているように感じています。集客・予約サイトへの依存やクーポンやディスカウント価格の乱用により、“努力しなくともお客は来る”と錯覚しているサロンも少なくありません。お店そのものの魅力が低下し、お店の「ファン」が減ってきているのです。

花上  “客が……”と呼び捨てにするスタッフもいますね。顧客を軽んじているのかもしれません。

野嶋 お客の側はサービス感度が鋭くなっています。顧客を大切にしないスタッフはすぐにわかるのでしょうね。お客が店に求めるサービスのレベルも高くなってきており、それを満たさない店には行かなくなる。その結果、リピーターが減り、新規顧客がほとんどという状態では、お店が疲弊してしまいます。

花上 どうすべきか、対策を教えてください。

野嶋 まずは、お店や会社の強み、競争優位性やアドバンテージを再確認するべきです。これらがはっきりと言葉にできない、見えていないお店が非常に多い。これでは、何を売りたいかわかりません。

花上 自らの価値を再発掘すべきということですね。

野嶋 次に、これらの価値のマネジメントが重要です。例えば、「うちの価値はお客さまに対する提案力です」という場合。“提案力”とは、企画の本数なのか、モノを売る力なのか、お客の希望に沿うことなのか、顧客満足度が高いということなのか。計測し評価する具体的な指標を設けることが大切です。価値のマネジメントができないと、「強み」は定着しません。

花上 その点、「安さ」を価値としている家電量販店はわかりやすいですね。安さの他にも、“白物家電が安い”“美容家電が得意”などの強みをはっきりと打ち出しています。

野嶋  「KPI(キー・パフォーマンス・インジゲーター)」という言葉が浸透してきていますが、組織の目標達成のための指標、価値を計測する鍵を見つけ、ファンの獲得を目指すことが重要です。

強みを言葉にすることで
得られるメリットは大きい

花上 組織の強みを見つけたら、それを発信しなければなりません。

野嶋 その通りです。ターゲットにわかりやすく発信するため、コミュニケーションスキルが非常に重要になってきます。「伝える力」を開発し、磨かなければ価値は伝わりません。例えば「安さ」を価値とする場合、地域で一番安いのか、どの製品、サービスがどのように安いのか、言い方一つで印象はガラリと変わる。優れた経営者ほど、言葉を大事にしています。

花上 異業種をみても納得できますね。

野嶋 言葉にすることにはさらなるメリットがあります。それは、優れたロールモデルをナレッジ化し、組織に定着できるということです。優れたスタッフがいる場合、なぜそのスタッフにはお客がつくのか、いいのは気遣いか、段取りか、センスなのか、言葉にすることで事例を細かく分解し、ベテランのやり方を新人でも実践できるようになります。これがナレッジ化するということであり、お店や企業全体の力を強化し、継続することでファンの拡大を目指します。

花上 優秀なやり方を「真似すること」の重要性は、どの仕事でも同じかもしれませんね。型が身に付いて、初めて自分らしさが出せるのだと思います。

野嶋 サービス業は、ロールモデルの優れた点を言葉にしづらいところがある。好き嫌いという多分に感情的な面もあります。しかし、サービス業において「安い」「早い」という機能的な価値だけではお客はつきません。それ以外の「フリンジ」と呼ばれる、例えば愛想や安心、気持ちよさなどの価値を磨かなければならないのです。

花上 この辺りの人間の心の動き、機微を若手にも伝えていきたいですね。今日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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