第1期対談第18回 顧客の「QOL」に即した商品・サービス提案をせよ
2016.07.1
admin
「顧客のQOL」と聞いてピンとくる人はどのぐらいいるだろうか。顧客が大事にしている「生活の質」を理解し、それに沿った提案をしなければならないと、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は言う。どのように顧客の嗜好を把握すべきか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。
顧客が大事にしている世界観、
暮らし、価値観を理解する
野嶋 今回はサービス・美容業におけるQOLについて考えてみましょう。
花上 QOLというと、Quality Of Life、つまり生活の質のことですね。医療用語として使われますが、それだけではないのでしょうか。
野嶋 サービス業、とりわけ美容業においては、お客さまの価値観、生活の質、あり方を見る「メガネ」が必要だと思っています。例えば、「脱毛」を勧めるにあたり、そのお客さまに脱毛をした後に何が変わるのかということを想像、提案しなければなりません。
花上 「売りたい」だけの営業、売り方ではダメだということですね。
野嶋 その通り。どれくらいの金額を美容に費やすお客さまなのか、趣味は何か、家族構成は、家は……そこまで考えて提案しなければならないのです。「痩せたい」「脱毛したい」というお客さまに対して、「なぜこの方はそうしたいのだろう」と考え、その背景を理解し、それを踏まえるべきだということです。
花上 特に若い人は、お客さまが大事にしているもの、こだわりをあまり理解していない傾向があるかもしれません。
野嶋 「お客さまの立場に立って考えなさい」と言っても、いまひとつ理解しきれないかもしれないですね。ヘアサロンでも同じことが言えます。お客さまが希望されるヘアスタイルに合う服はどんなものなのか、どこで買い物をしていらっしゃるのか、あらゆることを想像しないと、お客さまの希望に沿うことができないのです。
花上 お客さまが50歳代、施術者が20歳代というケースも多いです。
野嶋 世代間のギャップもあるでしょうね。リファーラル率に関しては前回もお話しましたが、顧客の生活に適った提案ができなければ、次の機会すらありません。
花上 現在の価値観は非常に多様ですので、なかなか大変な作業ですね。
野嶋 ただ、ある程度の目安はあります。例えば、よく言われている「マイルドヤンキー」などもQOLの一つ。ここでは詳しく述べませんが、彼らが大事にしている世界観を理解して提案できれば、お客さまの満足度はぐんと上がるはずです。
顧客の背景を調べて
課題解決型の提案を
野嶋 企業を見る「メガネ研修」という制度もあります。これは営業マンに対して会社の見方を教えるもので、例えば、競合、社風、社内制度といったものからその会社の状況を把握する方法です。こうした背景を掴めれば、オーナーの思いも見えてきます。
花上 確かに、どんなアプローチをかければ良いのかわからない営業マンは本当に多いですね。
野嶋 サービス産業も営業マン的側面がありますから、この考え方は大いに役立つはずです。“自分とはまったく違う好みを持っているという人がいる”ということが、本当の意味でわかっていない人が多いのです。
花上 引き出しを増やす必要がありますね。
野嶋 例えば、いま支持されている「IKEA」や「ドン・キホーテ」が、なぜこれだけ多くのお客の心をつかんでいるのか。そこには、自店がターゲットとする顧客が大事にしているものを理解し、それに合わせた店作りがあるからなのです。お店に行ってみるだけでも勉強になるのではないでしょうか。
花上 リファーラル率は上げるものではなく、上がるものなのですね。課題解決型の営業研修が必要だと痛感しました。本日はありがとうございました。
▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。
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